○アリ刺繍というインド伝統技法についてのお話
こんにちは。デザイナーのAIKOです。今日は私からインドの刺繍のお話をさせていただきます。
インドって本当に素晴らしい国。
そこら辺に素晴らしい技法が当たり前の顔して、存在している。
初めてこのアリ刺繍に出会ったのはたぶん2010年くらい。工場にコルカタ出身の職人さんがいて、「彼はコルカタの人だから刺繍が得意なんだよ」ってサンプル作ってみたら?と勧められたことがきっかけだった。
インド=アナログ
そんなふうにまだ思っていた蒼き私のインド初期時代。
少しだけ上からの目線でインドを歩いて大失敗した経験もこの頃ですね。何も知らないって怖い。見ようとしないと見れないものがあって、それに気が付かないで過ごすことはあまりにも勿体無い。本当にそう思って、歩き方、人生の見方を変えた頃でした。
そうしたらインドに感動するものしかないことに気づき。技法だけではなく、インドの建築や文化にまで自分の探究心がモーレツに刺激され、そして自分のこの目で全てをみたいと思うようになった。それができるインドにどんどんのめり込んだのだと思います。
コルカタ出身だからって当たり前に刺繍ができるって本当?って思ったけど、私がジャイプールで出会った刺繍の職人さんはみんなコルカタ出身だった。いつかこの刺繍が一番有名なコルカタの村につれていってほしいとお願いするも、治安があまりよくないらしく、未だ未開拓の土地。聞いた話によると、大人も子供も布に群がって刺繍をしているらしい。小さな頃から家や工場で刺繍を刺す親の背中を見て育った子どもたちは、当たり前にそこへの興味が湧き、身近に触れることで自然と習得していくのだろうと思う。床に座って刺す刺繍は子供の目線でも安全に見学ができるし、電源が必要なものではないので、家のどこにいても刺繍ができるし、いつでも手を止めることができる。生活の一部となり、刺繍がとても身近にあるんだろうなーと、職人さんの仕事ぶりを見ながら思うことがある。
いつか発祥の地に行きたい。その気持ちは今でも強く、実現する日が楽しみです。
初めてこの技法に触れてから、実際に商品として作り始めるまでには9年ほどかかっている。工場に一人いる職人さんに全ての刺繍をお任せするのは不可能だったので、メインのブロックプリントにフォーカスして商品を作っていたけれど、2019年に新しい工場に出会ったことがきっかけでkapuwaに刺繍のシリーズが加わることになりました。
コルカタに行かずとも、コルカタの職人さんが沢山働いている刺繍の工場との出会い。初めてこの工場を訪問した時は感動で泣いてしまいそうだった。職人さんの目の前で何時間も座って、絵を書いて刺繍の色糸を職人さんに差し出してどんどん刺繍してもらう。なんという贅沢な私。職人さん独り占めです。よくやります(笑)
kapuwaで使っている刺繍のシリーズは全てこのアリ刺繍というインドの伝統技法を使用しています。
前置きがかなり長くなりましたが、技法の説明をしてみようと思います。
そもそも、アリ刺繍の「アリ」とは「フック」のヒンディー語。刺繍というと刺繍針に糸が通ったものを手作業で刺していくと想像すると思いますが、アリ刺繍は針ではなくて木製の持ち手に金属製のフックがついたカギ針のようなものを使用して刺繍していきます。右手は布の上でこのフックを持ち、左手は布の下から糸を補給していく。刺繍の種類はチェーンステッチになるので、ぱっと見すごいスピードで容易い感じで刺繍を進めていってるように見える。
しかし、布の下を見るとかなり衝撃が走ります。左手で糸を補給しながら上から降りてくるフックの糸をくるりと引っ掛けていくんです。なんとか伝えたくて動画を撮っていますが、なかなか伝わらない。文字だと尚更伝わらない。これは実際に見れる私の特権だと思ってしまいますが。本当にすごい技法です。見よう見マネでできるものではないです。
kapuwa_designer のinstagramで動画ご覧いただけます→コチラ
ミシン刺繍との違いは、ミシンの場合は生地の厚みに関わらず布をピーンと張って刺繍する必要があるので、紙を挟んだりします。その為、刺繍部分は固く光沢が出ます。刺繍した後に洗いをかけてこの紙を溶かすのですが、生地が薄かったりすると刺繍と生地の間にシワが出たり、布は柔らかいのに刺繍は固く、なんだかミスマッチな雰囲気になるんです。
その点、アリ刺繍は布の厚みに合わせて職人さんが、手作業で刺繍を柔らかく刺していくので、生地に合ったふんわりとした出来上がりになって、変な光沢は出ません。余計に刺繍を刺しすぎることもないので生地に穴が開いたりすることもないし、薄手の素材ととても相性がいいです。
18世紀にヨーロッパの特にフランスやイギリスでこの技法が流行し、多くのメゾンブランドなどが、このインド伝統のアリ刺繍で作品を作っていたそうです。そこから形がかわりヨーロッパの文化や風土に合わせた刺繍の技法へと変わったと言われています。昔フランスの蚤の市に行ってみたくて旅をした際も、カギ編みで作るレースやその上に施す繊細な刺繍をしているお店に行ったことがあり、今思うとその刺繍も発祥はインドだったのかなと思うと、全てはインドに繋がっている。そんな風に感じて、14年も前に何かわからないけど、とにかくインドに行くことだけは諦めずにやってきた自分の選択を褒めたくなりました。
ブロックプリントもとてもとても時間のかかる技法だけど、この刺繍という”糸で図案を描く”この作業は、見ていて本当に泣きながらダンニャワード(ヒンディー語でありがとう)って叫びたくなるほど、とにかく莫大な時間と技術が必要だった。
まず余計なところに刺繍しないように布一枚一枚にパターンの印をつける。これまたカフスとかポケットとか、ちょっとだけあそこにもここにも刺繍したくなっちゃったりするのですが、そのパーツ全てを布にチャコでマーキングし、その布を刺繍の台に手作業にて設置する。一枚一枚ですよ。これオーダーが100枚、200枚を超えることも多く、この作業を100回、200回と繰り返していく。
刺繍の図案を手作業にて転写して、どんどん刺繍を刺していく。刺繍が終わっても一枚一枚もう一度パターンを載せて布をカットして、手作業にてミシンで縫い合わせていく。
量産と言われる100枚ほどのオーダーの場合、通常の工場では100枚の布を重ねて、一気に切ったりするものだが、刺繍の場合は本当に一枚一枚が全て手作業。日本人の私はどうにかもっと効率のいい方法はないのかな?と考えてしまうけど、インド人によく言われるのは、インドは人口が多いから、職人は沢山いる。全てのことを便利にする必要はない、と。ただ目の前にある「守るべき素晴らしい技法」を崩すことなくオリジナルのまま今まで使い続けていけてるのは、そういうことなのだろうと思います。
効率化を考えたり、リスク回避を考えるとどうしても人口的な固くて冷たいものを取り入れていかなければいけなくなる。ずっと柔らかくて朗らかで穏やかでいるためのヒントがここにはある。そう思いました。
一枚の洋服から学ぶことがこんなにも沢山ある。人の生活や伝統技法。盛んにこの技法が使われ始めたと言われる16世紀のこと。着るという当たり前の行為からここまで興味が広がる、そんなものづくりができていることを、本当に嬉しく思います。
堅苦しいお話になりましたが、とにかく可愛いので見てほしいです♪
アリ刺繍ってミシン糸でもできるし、毛糸でもできるしスパンコール入れたりもできるんだけど、とにかく繊細で綺麗すぎて、手刺繍だということを言われないと気付かない方もいるかもしれない!!!だからちゃんと説明したくて、こんなに長々とブログを書いております。
私は家のクローゼットに各1でキープしておきたいくらい「ミュージアム級の可愛さ」だと言っています。
今回のアリ刺繍、名前はDANCE。生地とお花の色のコントラストがとっても可愛くて、お花がダンスしてるような陽気な柄となりました。
色はしっかりと秋色なのに、しかもkapuwaで黒地ってとっても珍しい。どうする?黒DANCEでシックに新しい着こなしに挑戦する?ブラウンDANCEで秋のベージュコーデを楽しむ?今年着たいこれからくるコートに合わせてもいいよねー。手持ちのブーツに合わせてもいいし。でもでも好きなものを先に決めてから足りないものを新調するのもいいですよね♪
○アリ刺繍DANCEワンピース○
アームホールが大きいので、ジャンスカみたいにインナーにボリューム袖のPOなどを重ねることもできるし、もう少し寒くなったらタートル合わせも可愛い。私みたいに高身長(167cm)だとちょうど膝下10センチくらいなのでブーツで合わせるか、フラットな靴の場合はもう一枚スカートをレイヤードして着てみようかな!とも思っています。シルエットがIラインなのでスッキリと縦のラインが強調されて冬でも着膨れしないで重ね着がたのしめますよ♪
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○アリ刺繍DANCEブラウス○
襟ぐりにボリュームのあるブラウスって可愛いですよね。小さめの襟がカジュアルになりすぎず、襟ぐりのギャザーが袖まで全体をふんわりと見せてくれます。太って見えないかな?って思うかもしれませんが、綿100%の柔らかい少し薄手の素材なので、下に重ね着しても全然大丈夫!丈も長めなので、あえてボワっとふんわり着ても可愛いし、ハイウエストのパンツやスカートにインして袖だけのボリュームを強調させても可愛い。何よりもウエストに紐がついているので、インが苦手な方でもウエストを少しだけ紐で絞ってブラウジングするだけで、目線がかなり上に上がるのでスタイルアップが可能です。羽織にもなるし着こなし力抜群のブラウスですよ。
○アリ刺繍DANCEスカート○
形がものすごく綺麗なセミマーメイドなスカートなんですが、ヒップ下から裾に向かって綺麗に広がるようデザインされています。Aラインだと子供っぽくなるけど、この形なら靴がフラットでもヒールでもどちらの雰囲気にもマッチしそうです。ウエストベルトも太めなのでトップスをインして着る場合もホールド感がしっかりあって脚長効果抜群なんです。ウエストはぐるりとゴム上がりなので、腰あたりで着てロングスカートのように見せたりすることも可能です。ウエストの開きがないのでスポッと履きやすいのも便利ですよね♪
刺繍シリーズは本当に語りたいことが多くて、長々とお話させていただきました(^^)読んでいただきありがとうございます。また各店舗でも実際に試着して色を迷ったりもできますので、是非お立ち寄りくださいね♪お待ちしています。
———SHOP INFO———-
藤沢店
神奈川県藤沢市南藤沢21−1 小田急湘南ゲート/2階
Tel:0466-52-5494 OPEN: 10am-8pm
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室町店
東京都中央区日本橋室町1−5−5 コレド室町3/3階
Tel:03-6265-1140 OPEN: 11am-8pm
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川越店
埼玉県川越市脇田町105アトレマルヒロ/3階
Tel:080-5899-1304 OPEN: 10am-9pm